
「芸人さんが“今日はすべったな~”って言うけど、どういう状態?

観客の笑いが起きなかったときの表現です。
ここからは“すべる”の意味や言葉の由来などを詳しく解説します
この記事では、
- お笑いで耳にする「すべった」という表現の意味が知りたい
- 「すべる」という言葉の由来を知りたい
- 会話や文章での使い方を知りたい
という方に向けて
- 一般的な「すべる」の意味と言葉の由来
- 舞台やテレビでの代表的な使われ方
- 日常会話でよく使われるシーンやニュアンス
を分かりやすく紹介します。
この記事を読めば、「すべる」という言葉が持つ意味を理解でき、お笑い番組や日常会話をより楽しめるようになるでしょう。
お笑いで使う「すべる」とは?意味と定義を解説

お笑いにおける「すべる」とは、芸人が舞台やトークで発した言葉や動きに対して、観客から笑いが起きない状態を指します。
つまり「その場が盛り上がらずに静まり返ること」「笑いの反応が返ってこないこと」を表す用語です。
具体的には「ウケない」「笑いが取れない」とほぼ同義であり、演者本人が自らを振り返るときや、周囲の芸人が冗談交じりに指摘するとき、さらには観客や視聴者が感想を述べるときなど、幅広い場面で用いられます。
すべる(スベる)・・・芸や冗談がウケず、その場を微妙な空気にしてしまう状態
なお、本記事では表記を「すべる」に統一しているが、芸人の発言やテレビ番組内では「スベる」とカタカナ表記される場合もある。
用語としての位置づけ
「すべる」は、もともとお笑い業界で使われてきた専門用語の一つです。
舞台に立つ芸人同士が状況を共有するための隠語的な意味合いが強かったのですが、バラエティ番組や雑誌などのメディアを通じて広まり、現在では一般層の間でも日常的に用いられるようになりました。
このように業界発の用語が広く社会に浸透し、世代を問わず理解されるケースは珍しく、「すべる」はその代表例のひとつといえます。現在では「会議でジョークを言ったらすべった」など、ビジネスシーンや日常生活でもごく自然に使われています。

日常生活の中でも「スベった」という表現はよく耳にしますよね。
「失敗」とは異なるニュアンス
重要なのは、「すべる」が必ずしも芸人の能力不足や明確な失敗を意味するわけではない点。
笑いが生まれるかどうかは、観客の年齢層や文化的背景、会場の雰囲気、さらには前後の演者や話題の流れといった多様な要因によって大きく左右されます。
そのため、一見「すべった」と思える場面も、状況や文脈次第では自然な出来事と捉えられることが多いのです。むしろ芸人にとって「すべる」は避けられない現象であり、舞台経験を積むうえで誰もが通る過程とされています。
「すべる」という言葉の由来と歴史

「すべる」という表現は、もともと日常用語として「足をすべらせる」「つるっとすべる」といった【物理的な動作】を指す言葉でした。
そこから派生し、「意図したことがうまくいかない」「結果が思った通りにならない」といった比喩的な意味合いを持つようになったと考えられます。
- 足をすべらせる → バランスを崩す
- 話や冗談がすべる → 空気を崩す
また、【場の空気が冷える様子】を「氷の上を滑るように冷たい」と形容したことや、「発言が場に引っかからず流れていく」比喩から広まったと考えられている。
お笑い業界での定着
お笑い業界で「すべる」が専門用語として定着したのは、漫才やコントが大衆演芸として広く浸透した時代以降とされています。
特に昭和後期、テレビのバラエティ番組が普及する中で、主に関西で芸人同士が舞台裏や楽屋で使っていた「すべる」という言葉が、そのまま番組上で使われるようになりました。こうして視聴者の耳にも届き、全国に広まっていきます。
この普及の大きなきっかけを作ったのが、ダウンタウンの松本人志さんだと言われています。
さまぁ〜ずの三村マサカズさんは、松本さんから初めて「スベる」という表現を聞いたと回想しており、
「関東では言ってなかったと思う。松本さんの功績ですよね、それは。全国の人がスベるって言うじゃないですか?」
と語っています。
「ウケる」と「すべる」という対比は、笑いをわかりやすく言語化する軸となり、以降お笑い用語の中でも特に広く使われるようになりました。
メディアを通じた拡散
1980年代〜1990年代のテレビバラエティ全盛期には、「芸人がスベった」という言い回しが司会者や共演者によって積極的に使われ、半ば“笑いのネタ”として視聴者に届けられるようになりました。
- 芸人同士のツッコミに用いられる
- テレビのテロップで強調される
- 観客や視聴者が日常で真似をする
こうした流れを経て、「すべる」はお笑い専門用語の枠を超え、一般的な会話表現へと定着していきます。
現在では若者言葉からビジネス会話まで幅広く使われるほどの市民権を得ています。
舞台・テレビで「すべる」が用いられる場面

「すべる」という言葉は、テレビのバラエティ番組や劇場などのお笑いの現場で、芸人の発言や動きに対して笑いが起きなかったときに使われます。漫才やコント、フリートーク、さらには一発ギャグまで、その範囲は幅広いものとなっています。
典型的なケースを挙げると、次のようになります。
- 大きなボケを放ったのに笑いが起きなかったとき
- アドリブの一言が響かず、会場が静まり返ったとき
- ギャグやエピソードトークが受け入れられなかったとき
劇場やイベントなどの舞台の場合、観客の反応がダイレクトに返ってくるため、「すべる」は芸人にとって避けがたい現象です。むしろ経験を重ねる過程で必ず直面するものであり、芸人の力量や成長を試す瞬間でもあります。
一方で、テレビのバラエティ番組では、その「すべった瞬間」自体が笑いの一要素として扱われることがあります。司会者や共演者が「今スベったな」と拾ったり、テロップで強調されたりすることで、むしろ番組を盛り上げる仕掛けになるのです。

すべることによって場が盛り上がげる「すべり芸」も存在しています。
このように「すべる」は、舞台ではリアルな現象、テレビでは演出の一要素として機能し、結果的に観客や視聴者の間にまで浸透していきました。
お笑いの「すべり芸」との関連性とは?

もともと「すべる」という言葉は、芸や発言が観客に受け入れられず、場の空気が冷え込むネガティブな現象を指します。しかし、この“すべる”状況をあえて逆手に取り、笑いに変えてしまう芸風が「すべり芸」と呼ばれています。
すべり芸・・・すべることで笑いをとること
観客の反応が得られない場面をあえて作り出し、そこから共演者のツッコミや観客の苦笑を誘発することで、結果的に場を盛り上げる。一見すると失敗のように見えながら、実は高度なテクニックのひとつだと考えられます。
「すべり芸」が成立する仕組み(考察)
すべった瞬間、会場は一時的に静まり返ります。通常ならば気まずい雰囲気になるところですが、その直後に観客が苦笑したり、傍観していた人が思わず吹き出したりすることがあります。こうした「ズレによる二次的な笑い」を積極的に利用するのが、すべり芸が成立する要素だといえるでしょう。
典型的なパターン
こうしたやり取りは、観客や共演者との間に「これは笑っていいものだ」という共通認識があるからこそ成立しているように思われます。単なる失敗ではなく、共有された空気の上に成り立つ“笑いの形式”といえるかもしれません。
お笑いにおける位置づけ
すべり芸は一見すると即興の産物のように見えますが、実際には間の取り方や展開の仕方に計算があるように感じられます。
観客が笑うのはギャグそのものではなく、「すべったことをどう扱うか」という部分。
ここに演者の力量が大きく影響しているのではないでしょうか。
そのため「すべる」という一見ネガティブな現象も、笑いの文脈に取り込まれることで、ひとつの芸風として受け入れられるようになったと考えられます。善し悪しに関しては賛否両論ありますが、今では「すべり芸」という言葉自体が定着し、多くの人が理解できるお笑いのスタイルとなっています。
日常会話で使う「すべる」の意味

日常生活で「すべる」といえば、多くの場合は冗談や一言がウケなかったときの軽い言い回しとして使われます。
たとえば、次のようなシーンが典型的です。
- 飲み会でジョークを言ったけれど、誰も反応してくれなかった
- 会議で発言したら、微妙な空気になった
- 友達にギャグを言ったのに「……で?」と流されてしまった
この場合、深刻な失敗を意味するわけではなく、ちょっとした“気まずさ”を表現するための便利な言葉になっています。
まとめ
お笑いにおける「すべる」とは、本来は芸や発言が観客に受け入れられず、場の空気が静まり返る現象を指す言葉です。
もともとは芸人同士が共有する業界用語でしたが、テレビや雑誌を通じて一般にも広まり、今では日常生活でも広く使われる表現となりました。
芸人にとっては避けられない現象でありつつ、一般の人にとってはちょっとした気まずさをユーモラスに表現できる言葉。
ぜひ次に「すべった」瞬間が訪れたら、それをネガティブにとらえるのではなく、笑いに転換するチャンスだと思ってみてください。



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